ニッティド株式会社《会社訪問》

■■□ 世界初の3次元5本指ソックスで新市場開拓 〈フリーライター 浅木武彦〉

一味もふた味も違う「5本指」

 作業手袋とジャージィの編立て生産で国内有数の産地とされている和歌山県。ここを走るJR紀勢線の下津駅で下車すれば、徒歩で約6分の地点に、今回訪ねるニッティド株式会社の本社事務所と工場が存在する。きわめて商品価値の高い5本指ソックスの開発・企業化に成功した同社ビルの正面玄関に一歩足を踏み入れただけで、整理、整頓がいき届いた社内の雰囲気と礼儀正しい社員の応対ぶりから、この会社のものづくりに対する真摯な姿勢を感じ取る事が出来るかのようだ。さてその話題の製品、5本指ソックスは、 ①5本の指でしっかりと床をつかめるので正しい姿勢が保たれ肩こりの緩和に役立つ、②指を1本ずつ包むので保温性が高まり、かつ血液循環が良くなり足の冷えが改善される、 ③指が動き易くなり脳の活性化につながる、 ④指股のツボが刺激され胃腸の働きが活発になる、 ⑤5本の指にそれぞれ力が入るのでスポーツ、力仕事に最適である――などの特徴を有する。

足指の形状に合わせた絶妙なバランスの指幅

 もっとも、ここまでは、全国どこの売り場ででも見掛ける一般的な「5本指」製品だが、同社のそれは、「5本指」本来の特性・持ち味を踏まえつつ、「足指の形状に合わせた絶妙なバランスの指幅」を有するため、履き易さが一段と向上。かつ、足ムレの悩みも完全に払拭された一味も二味も違う製品なのである。

12月12日,「5本指ソックスの日」

 これを可能にしたのが、幾つかの試行錯誤を重ねながら1974年12月12日、会長が指先部分を減糸したり、特注の細番手綿糸を使うなどで理想的な数値を探り当て、細い糸を使う実用新案を出願した。そうしてこの日を「5本指ソックスの日」として2013年10月に日本記念協会に記念日を登録した。また1995年ごろからは陸上競技、野球などスポーツ選手に踏ん張りが効くと次第に需要が増えたのでる。

工場の内部

 同社のあくなき開発姿勢、および、島精機製作所製の完全無縫製ホールガーメント横編機を5本指ソックスの生産に応用した斬新な使いこなしはノウハウだ。このホールガーメント機の応用によって、柄や形状が自由自在に編めるため、「履き心地の良さに加えて洒落た感覚のデザイン性も飛躍的に増す事につながった」(同社・井戸端康宏社長)としており、世界で初めての立体的な「3次元の5本指ソックス」(四件の特許取得済み)と称されるゆえんでもある。因みに同社のホールガーメント編機保有台数は219台の多きを数えるが、これはほぼ日本一の設置スケールと云えるのではないか。

「おもいっきりテレビ番組」で放映

井戸端隆宏 会長

 このソックス、1999年11月に日本テレビの「おもいっきりテレビ番組」で放映され全国的な話題となったのをきっかけに、一段と需要が拡大して取扱い店のさらなる増加という副次効果ももたせ、現在に至っている。

井戸端康宏 社長

  同社の誕生は1981年。康宏社長の父君である井戸端隆宏氏(現在は同社会長)が設立した。創業当初の社名はニットグローブ株式会社で、特紡糸を原料とする作業手袋(略して「作手」(さくて)。昔は軍手と称した)が主要生産アイテム。現社名に変更したのは2006年だった。そのニットグローブ社のルーツが、井戸端隆宏氏のやはり父君(すなわち康宏社長の祖父)である井戸端政一氏が1926年に創業した「井戸端軍手工場」で、現在箕面市が本社の「おたふく手袋株式会社」の前身なのである。云うまでもなくおたふく手袋㈱は、国内屈指の規模を有する各種作手の製造メーカーであり卸販売商社だが、この系譜が示す通り、オーナー経営者の〝井戸端一族〟はスジ金入りの手袋専門家揃い。「手のスタンダードを足にも」が、いわば〝家訓〟のようなもので、作手の姉妹製品とも云える5本指ソックスの開発にも、特別の思い入れがある道理だ。

更なる海外市場開拓に力点

 そこへもってきてニッティド㈱の現社長・康宏氏は同志社大を卒業後、田辺経営コンサルタント会社勤務の経験もあるところから、新時代の経営管理やマーケティング手法にも長けており、まさに「鬼に金棒」。

第40回全国発明くふうコンクール 特別賞

2004年には中国・浙江省に合弁会社を設立し、欧州市場狙いを視野に入れドイツに販売会社も擁しているほどのグローバル経営感覚の持ち主だ。「今では国内、海外とも健康志向で5本指が認知されており、サッカーの本田圭祐選手も愛用しているほど。今後は国内市場の深耕と、更なる海外市場開拓に力点を置いて取り組みたい」と抱負を語る井戸端康宏社長だ。

 なお参考までに付記すれば、世界で初めて5本指ソックスを創出したのは、1970年にスペインのカルセン社。120ゲージの丸編機で編んだ本体に横編機による指先部分をドッキングさせて工業生産化を狙ったのが始まりとされているが、当時の売り場でですら認知・評価されるには程遠いお粗末な品。その後カルセン社が倒産した事もあって、この製品もいつの間にか自然消滅する形となっていた。一方、日本に於ける初の5本指ソックス展開は東京のソックス専門卸の㈱関川で、1974年の事だった。

◆ニッティド株式会社◆

本社所在地・・・・和歌山県海南市下津町丸田 68 -1

代 表 者・・・・井戸端 康宏

主要生産品目・・・5本指ソックス専業

【Web版注記】本記事は「ニット・ファイル通信」Vol.16,2015.7 (文と写真:フリーライター 浅木武彦)に掲載したものです。内容は発行日現在のものです。