介護ニット帽の (有) アクティア 《会社訪問》

 ■■□ ユニバサールニット帽子専業  「有限会社アクティア」 松村敦子奮闘記  □■■

 

患者さんがお洒落な気分で療養出来るように願いをこめて

「バンダナ帽」は患者さんの声から誕生した介護ニット帽の草分け

代表者:取締役社長 松村敦子

 同社は大阪・船場のド真ん中にある。事務所に入ると社長の松村敦子さんが優しい笑顔で迎えてくれた。2005年7月に立ち上げた㈲アクティアの創業者であり、日頃は自ら営業の第一線に立ち、新規取引先開拓も含めた顧客ワークを、エネルギッシュに推進する力強さも内に秘めた女性経営者である。   

「洒落っ気」

 柱とする営業品目はユニバーサル・グッズ。いわゆる介護衣料品や小物類の企画開発から生産・販売までを、生地見本づくりと製品開発・品質管理担当、ネット担当、経理専門の各社員3人と社長との総勢4人でこなすベンチャー企業の部類といっていいだろう。同社が手掛ける製品は、医療・介護の現場で重宝する実用性・機能性に優れている点は云うまでもないのだが、それと共に「お洒落感覚に溢れた製品開発・提案」を重視しており、これが最大の特徴。介護現場に「洒落っ気」を吹き込んだとの視点からすれば、まさしくベンチャー企業の名にふさわしいところだ。

介護帽子

 こうした「洒落っ気」への思い入れは、よくよく聞いてみると、かつてガンを患い苦しい闘病生活を強いられた義母上の存在に負うところが大きかったとの由。「お洒落な義母だっただけに、抗がん剤の副作用で髪が抜け、人に会うことを嫌がり気落ちしていた。そこで義母が愛用していたスカーフを、帽子にリフォームしてみた。人前でずれないようにフィットさせて欲しい、しびれる手であってもサイズ合わせが簡単に出来るようにして貰いたいなど、いくつかの要望を汲み上げながら、人前でかぶっても気遅れのしない〝介護帽子〟と云う試作品が出来上がるに至り、喜ばれた。その後はこれを土台に工夫改善と研究を積み重ねる過程で、伸縮性の良い素材メーカーや、技術水準の高い縫製工場との出会いにも恵まれ、闘病生活で頑張っていらっしゃる方々に喜んで頂けるお洒落感覚をも備えた独創的な〝バンダナ帽〟を、ようやく完成させる事が出来たのですヨ」――というのだ。

バンダナ帽

 この〝バンダナ帽〟の特徴は、①帽子の後ろ部分にしつぽが付いており、しっぽを引っぱると幅が狭くなり自在にサイズ調整が可能、②前ターバンは二つ折のため、おでこがすっきりする上、伸ばしてかぶれば額も隠せる、③前から中央にかけて4本のタックがあるので髪が少ない人もふんわりとボリューム感が出せる④介護用途が主体だが、しっぽを内側に入れるとシンプルな装いになり、束ねた髪はしっぽを輪から抜いてかぶれば、カジユアルやスポーツ用途としても十二分に通用する――など。

3つの愛が集約したバンダナ帽で患者さんに笑顔

 商品構成ラインとしては①「定番商品」=上質コットン使い、カラー8色展開、②「スカッシュ」=吸汗、速乾、耐久性、カラー7色展開、③「かるふわ」=ふんわり軽やか、軽量コットン使い、かるふわは4色展開、④「ナイトゥン」=はバンダナ帽の下にかぶる事も出来る極薄の帽子、⑤バンダナ帽を収納して持ち歩くためのニット製バッグを取り揃えている。

「akko」は「温かい心」という意味

 使用素材は第一紡績の特ビキ綿100%による丸編み生地使い。現在、「akkoバンダナ帽」と云う商標で、百貨店の介護用品売り場や大手病院内の売店などを主体に販売展開しているが、「akko」は「温かい心」という意味が根底にあり、さらには「帽子に心を注いで作る気持ち」や「この商品を入院している人の心を癒すために贈りたいという一途な心情」と、贈る側・受け取る側の双方が「心の絆で結ばれて欲しいとの願望」など、関係する皆の温かい心を介護ニット帽子に託して命名したという。

 こうした経緯を見れば、起業そのものから商品開発と販路の敷設まで順風満帆で来たかのようだが、当初は必ずしもそうばかりではなかった。〝バンダナ帽〟の見本を手に、かなりの自信をもって売り込みに飛び込んだ病院では、「ウチで帽子は扱ったことがない」とか、「置いたことがない」などと、殆どが事務局長の窓口段階で門前払いの状態。しかしそうした日々の積み重ねが、やがては患者さん達の口コミなどで評判となって広まり始め、次第にいくつもの大手病院での納品実績が膨らんでいった。当時、介護用帽子は競合品がほぼ皆無で、いわば同社がこのアイテム分野の草分け的な存在だった。

ものづくりの良さとファッション感覚表現

有限会社アクティア

 一方、大阪駅前の阪急百貨店に、アポ無しだったが意を決して訪問し商品説明を試みたところ、初対面のバイヤーだったにも拘わらず「当店の介護売り場にふさわしい」と、意外にも嬉しい反応。即座に納品が決まると云うラッキーな事例も生まれた。しかし、その後はガン検診制度の普及や、医療技術の発達と薬剤の進歩などが患者発見症例数の増加につながり、それに着目した同業他社、いわゆるコンペティターの参入が相次ぎ、特に2012年頃からは価格競争が熾烈となって来る。それらの多くは中国あたりからの輸入品だが、同社は、そうした流れにブレる事なく、あくまでも日本製品による高品質ものづくりの良さとファッション感覚表現にこだわり続けて現在に至っている。

「社会的貢献」も経営理念のひとつとして・・

 また、才媛のほまれ高い松村社長だけに本業の傍ら、阪南大学や京都学園大学での女性経営者の集まりに参加し、「介護帽子を開発・提案する事で闘病者に勇気を与え、力になってあげる女性企業家の体験談」と題する講演を行った事もあるなど、女性が仕事を介して社会的貢献をし、ひいては女性の地位向上につながれば・・との前向きなスタンスと行動力の持ち主でもあるようだ。そう云えば、同社がスタートした3年後の2008年には、米国の或る財団が支援する、ニューヨークでの世界の女性企業家を励ます顕彰制度「スティービー賞」を同社が受賞。その折に松村社長が謝辞として「世界のガン患者に帽子を届けたい」旨を英語でスピーチし、会場内の共感を集めた事もあった。

新しいビジネスモデルを

 「顧客の幸せを最も大切にしている。患者さんに喜んで貰えたらそれが一番嬉しい。会社は無理に大きくしなくても、患者さんに愛をこめて商品を生産、販売していき、かつ、倫理もわきまえた会社でありたいと願っていますし、そのための新しいビジネスモデルを構築していく事が出来れば、と考えています」――と語る松村敦子社長の言葉がとても印象的で、同社を辞してからもなお、いまだに記者の耳の奥にこだましている今回の訪問取材だった。

【フリーライター 浅木武彦 、Web版再掲・初出:ニット・ファイル通信Vol.15,2015 】

■ 有限会社アクティア  代表者:取締役社長 松村敦子

本  社:大阪市中央区南船場3ー6ー1 サイプレス心斎橋

創  業:2005年7月 資本金:1000万円

業務内容:ファッション性と機能性重視のユニバーサル介護衣料品製造・販売