「おもてなし」を、カジュアル業界でも

■■□ オフィスふで箱:下谷洋司のちょっと一言 □■■

「おもてなし」を、稼ぎネタに考えてみよう・・

 日本政府の観光局発表によると、昨年度(暦年)*1)にわが国を訪れてくれた外国人旅行者数は、データを取り始めてから過去最高の1341万人を記録したとか。この状況を創り出した最大の〝功労者〟は、「円安の為替相場」だろうが、それは兎も角、GDPの2倍強にも相当する膨大な国の借金を少しでも減らすには、例え「焼け石に水」の感があろうとも、この好機にこれら外人旅行者たちが、国内各地でより多くのお小遣いを浪費してくれるよう、仕向けていかねばなりますまい。

「おもてなし」は外食産業の専売品にアラズ!

 その決め手のひとつで、「おもてなし」なる言葉に

象徴され、また実際にそれが効を奏しているのが、〝日本流〟のキメ細かい接客ノウハウをも駆使しながらのあの業界。そう、ピンは高級割烹料亭や和風旅館、シティホテルに始まり、キリは庶民的な縄のれんの飲み屋に至るまでを含めた〝広義〟の食品産業界が先鞭をつけた感じで外人客に、ウケにウケている。無論、そうした施設・拠点へのアシの便を図る役目のLCC(格安航空会社)やJR新幹線、および私鉄各社の労も多とすべきだろうが・・。その他、ディスカウント家電販売チェーン店やドラッグストアチェーン店、百貨店の高級ブランド小物や宝飾品、コスメティック売場なども、負けてはならじと、しっかりお稼ぎの様子だ。

 それに引き替え、やたらおとなしいのがわが繊維業界・ファッションビジネス業界――。こんな願ってもない商機が到来していると云うのに、指をくわえたまま傍観していて良いんでごんざりまする(どこの言葉や)か?

(イメージ写真:流行色の「白」で押してみよう・・。)

入り口部分の〝仕掛け〟が重要だが・・

 尤も、繊維業界がこうした流れをまったく享受していない訳ではありませぬ。意外な事に、腹巻きやソックスなどのアイテム分野が、外人客の目には「面白い製品」と映るのかどうか知らないが、「日本みやげ」と云う大ぐくりした範疇の一部として、業界本来の〝実力〟の割りには〝雀の涙〟程度を稼がせて戴いとぉりまする。でも、どうにも不本意ではありませんか。もっともっと外人観光客の目をひきつけ、財布のヒモを緩めさせる手段がありそうなものを・・。

 例えばどうです、このところの人気カラーのひとつである「白」を強調した、デザインセーターとかデザインカーディガンを前面に打ち出した着装提案で迫ってみる、と云う手は・・。勿論、安ものの素材使いは禁物であり、編立て・縫製の手間ヒマを惜しんだ製品は駄目ですヨ。

 観梅の時節は過ぎたが、老梅のゴツゴツした黒っぽい幹や枝ぶりの脇に嫣然とたたずむ白いセーター姿の外人女性。ボトムは茶色か濃いグリーンの布帛スカートの組合せが宜しかろう。これは絵になりますゼ。勿論その脇に彼女の旦那か彼氏かが、ペアールックで寄り添っていても一向に構いません。〝客単価〟が膨らむのですから大歓・・。

 こうした情景は、間もなく見頃となる桜並木の下に舞台を移せば、なおさら映えるでしょうなぁ。青空の下、ピンクの花吹雪が舞い、チャコールグレイの桜の木の幹の色と白い高感覚ファッショナブルセーターが、絶妙のコントラストを醸し出す――。これぞ「四季の彩り鮮やかで、雅味溢れたニッポン」ならではの舞台演出とファッションとの融合による商機創出なのです。

チャンスは目の前に

 但し、彼女や彼を、こうした舞台に導くまでの〝仕掛け〟が肝心です。主要空港や鉄道駅のコンコースに、それなりのPR用ブースを確保し、外人客をその気にさせるためのパンチの効いたプレゼンテーションが不可欠ですし、旅行代理店へのアプローチも欠かせませんナ。

 どうもわが業界は昔から、引っ込み思案でこうしたオリエンテーションが苦手のようですが、需要の受け皿はここへ来て一挙にグローバル化しています。送り手たる業界が力を合わせ、意識や行動パターンを変え、それなりの投資をしなくてどうしますか。チャンスは目の前にころがっているのですゾ。

【再掲:下谷洋司 [オフィス ふで箱] 代表、ニット・ファイル通信 Vol.15,2015】

■Web版注記 *1) 2014年