直線と曲線

ファッションへの期待をかなえる

 その昔、着る物のルーツは動物の皮や草木の葉などを羽織っただけという史実がありますが、考えてみればその当時は自然のままの線しか見えなかったのでしょう。でも、視角をほんの少々変えるだけで、世の中には直線や曲線が存在する事に気づかされるものなのです。

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 ファッション業界に携わるデザイナーはその曲線と直線の中で「明日売れる物」を考えています。女性らしい優しさを出すラインを描くためには曲線が使われ、そして男らしさや強さなどの強調表現には直線を、と云うラインが、しばしば有効的に使われますが、ニット分野の表現手法としてはどうでしょうか――。

 表面的に捉えれば、単なる一枚の布にしか見えないニット生地ですが、その中身自体は紳士物も女性物も曲線( ループ) で編まれた、シンプルなようでいて、編地によっては複雑でもある生地組織体なのです。これにデザインやシルエットを描いてそのイメージを重ね合わせていくと、直線も曲線も自在に取り込んだ、味のあるファッション創出につながると云うのがニットの、内に秘めた可能性と云うものかもしれません。

 いつの時代もファッションは常に自己の主張であり、内面の表現のひとつですが、これに加えて「社会環境を反映しているもの」であるとも云われています。また季節で着分ける服装、時と場所で着分ける服装、体形で着分ける服装、好き嫌いで着分ける服装と複雑に絡み合い多様化しているファッションの流れの中で色彩の傾向、素材の傾向、シルエットの傾向とも連動している。このように色々と絡み合っている衣服に対して最初の一歩は、直線と曲線だけで考えなければならないのです。

 そして着る物に関しての着る人の意識が、現実から遊離した「嘘」のファッションから、自分たちの生活の中で個性を自然に表現出来る、自由でシンプルなファッションを求めての大きい変化が現われるのではないでしょうか。様々な購買層が持つ生活のいろいろな側面で、自分をしっかりと表現したいと云う、ファッションへの期待をかなえるために、このように直線と曲線で始まる次のモノ作りする側の努力が、ますます意味を持ちます。

(本誌編集部)

【再掲】ちょこっとお勉強 ニット・ファイル通信 2016.4 – Vol.19より

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